エルジン( Elgin )とは、以前は時計メーカーであり、現在は時計ブランドの名称である。

腕時計の歴史

腕時計の誕生

 腕時計自体は19世紀後半に誕生したが、当初は時計付きブレスレットとして女性用の装身具であり、実用上も精度は低かった。
 懐中時計は手首に装着された腕時計は有利であった。草創期の使用例としては1895年の日清戦争に従軍した日本兵の写真に腕時計(一説に、腕に巻いた懐中時計)が写っていた例、1899年のボーア戦争でイギリス軍将兵が懐中時計を手首に装着した例がある。 その後、ムーブメント(時計内部の機械)のみの共用を経て、腕時計専用のケースとムーブメント開発が行われるようになった。

初期の腕時計

 20世紀初頭、一部のメーカーが腕時計生産を開始したが、男性が携帯する時計は懐中時計が主流で、腕時計は正式な存在とは見なされてかった。
 紳士用腕時計として成功を収めたのはカルティエが開発した角形ケースのサントスで、1911年のことである。 この腕時計はアルベルト・サントス・デュモンのために作られたものであった。スポーツ・ウォッチの古典となり、21世紀に入った現在でも代表的な製品の一つとして市販されている。次世界大戦は腕時計の普及を促す契機となり、携帯する時計は懐中時計から腕時計へと完全に移行した。
 腕時計生産国としては、懐中時計の時代から大量生産技術が進展したアメリカ合衆国のほか、時計産業が発達したスイス、イギリスなどがあげられる。

自動巻腕時計

 自動巻腕時計とは、時計内部に半円形のローターが組み込まれており、装着者が腕を振ることにより、ローターが回転しぜんまいを巻き上げることができるというものである。
全回転式ローター自動巻がロレックスで1931年に開発され、同社は名で市販、オイスターケースと呼ばれる防水機構と共にロレックスの名を売った。現在では全回転ローター自動巻が一般化している。竜頭を用いてぜんまいを手巻きすることもできるが、廉価型の腕時計には構造を簡素化する目的で自動巻専用としたものもある。 自動巻は装着されている限りぜんまいの力が常に十分に蓄えられているため、手巻き式に比べて精度が高くなる傾向がある。

日本の腕時計

 1955年には国産初の自動巻腕時計「セイコーオートマチック」が発売され、その後も「グランドセイコー」、「シチズン クロノメーター」など、腕時計と比肩しうる精度の国産時計が登場した。セイコーは電子計時を採用し、オリンピックで計時に関してノートラブルを実現した。腕時計メーカーは、電子計算機分野から参入したカシオ計算機を除くと、懐中時計や柱時計の分野から参入した企業である。 タカノ(腕時計生産は1957年から)が存在したが、中京圏に本拠があったため1959年の伊勢湾台風で大被害を受けて

精度向上と電気動力化

 腕時計にはその振動数が高ければ高いほど時計の精度は上がる。摩耗が早まり、耐久性ではやや不利である。
超小型モーターで駆動する方式で、調速の最終段階には機械式同様にテンプを使っていたが、電源をトランジスタで整流して駆動力の安定を図っていた。 1960年にはブローバが音叉式腕時計「アキュトロン」を開発した。
 音叉2個を時計に装備して、電池動力で一定サイクルの振動を得る。この振動を直接の動力に、ラッチを介して分針時針を駆動するものである。振動サイクルは毎秒360回と、クォーツ腕時計以前では精度であったが、ブローバが技術公開やムーブメント供給に積極的でなかったこともあり、クォーツショック以降は速やかに廃れた。

クォーツショック

 セイコーはクォーツ腕時計(水晶発振式腕時計)「アストロン」を発売する。定価は45万円と、大衆車よりも高価であった。 水晶は電圧をかけると一定サイクルで振動する(水晶振動子を参照)。
 水晶発振器の信号を信号に変換し、この信号をステッピングモーターに与えることで、1秒ごとに秒針を回している。この原理自体は大型置時計は存在していたが、腕時計に使えるサイズに超小型化したのは努力によるものであった。腕時計は、秒針が連続して滑らかに動くスウィープ運針だったが、クォーツ時計ではために、秒針が1秒刻みで動くステップ運針と容易に見分けられる。
 クォーツ腕時計は通常、発振周波数を32.768kHz(=215)に調整された水晶を使用する(この周波数が計時設定上使いやすいためで、それ以外の数値に設定される例もある)。 高さは圧倒的で、機械式はブローバの音叉式「アキュトロン」をも遙かに凌ぐ高精度を実現した。
 時計メーカーにとって深刻だったのは、オイルショックとドルショックだっただろう。アラーム機能、ストップウォッチ機能など、腕時計の高機能化が進む一方、クォーツ腕時計の低価格化が進み、かつては腕時計が、子供でも買うことのできるような身近な商品へと変貌した。 ハミルトンよりデジタル腕時計が発売される。 この腕時計では時刻を表示した。アナログ式より廉価な存在となっている。

機械式の復権と日本メーカーの凋落

 機械式ムーブメント製造の事情は大きく変わった。 ムーブメント製造を行う専門メーカーの再編と淘汰が進み、現在ではムーブメント供給でシェアを占めるようになった。現状では高級品と並級品とがETAムーブメントを用いているケースも珍しくなくなったが、自動化生産が進んだといえども機械式ムーブメントは手によって組立せざるを得ない。
 組立(ケーシング)技術・仕上げの技術にはメーカー間の姿勢、熱意、技術等に差があり、同じETAムーブメントでもブランドによっては精度・仕上げに差が出る事も多い。ETAムーブメントに頼らず自社開発・製造を行っているメーカーも残っている。 パーツを除きムーブメントの製造から組み立て、仕上げまでを一貫して行うメーカーをマニュファクチュールと呼んで視する。
手軽かつ高機能なクォーツ時計と、機械式時計という位置づけで棲み分けがなされるようになった。 安価な人件費を武器にしたアジア製のクォーツ時計との価格競争に大幅にシェアを失ったのである。

新たな腕時計の模索

 高級機械式腕時計として1960年代に名声を博した「グランドセイコー」、「キングセイコー」を復活させるなど、機械式腕時計の開発に再度力を入れるようになってきた。腕時計も投入している。セイコーの「キネティック」は自動巻き時計と同様にローターを振りによって発電を行う、電池交換不要のクォーツ腕時計である。腕時計「スペクトラム」の発売も注目されている。セイコーは機械式ムーブメントに、代わりに調速機構を組み込みクォーツ時計並みの高精度を実現した「スプリングドライブ」を開発している。 珍しいものに、外気温と装着者の体温の差を動力源にするものが(Citizen Eco-Drive Thermo)。
 カシオは、腕時計はたやすく壊れる、という常識に反し、2~3階から落としても壊れないという耐衝撃性能を備えたタフな腕時計、G-SHOCK(Gショック)を1983年から発売した。 その頑丈さを買われて、過酷な状況にある湾岸戦争やイラク戦争などの戦場で兵士たちに愛用されていたという。機械式腕時計も技術革新を怠っていない。
オメガはジョージ・ダニエルズ氏が発明した「コーアクシャル」と呼ばれる新機構を導入し、機械式時計の心臓部である調速機構との動力伝達を果たす、脱進機機構(アンクル爪、ガンギ歯)における摩擦の大幅な低減に成功している。 スウォッチは、安価なクォーツ時計に、鮮やかな色彩、有名アーティストによるデザイン、少数限定販売という付加価値を与えることで支持を集めている。おり、日本の若者にはあえて腕時計を使わない者も少なくない。 腕時計の展開に与える影響が注目されるだろう。